バフェットの株主への手紙(2009) 5.製造、サービス、リテール事業

さて、今回は、バークシャーの所有企業の中ではやや地味な部類に属する、"Manufacturing, Service and Retailing Operations"のパートの翻訳をお届けします。

製造、サービス、リテール事業

バークシャーのこの部分の活動は多岐にわたっています。そこで、グループ全体のバランスシートおよび損益計算書の概略を見てみましょう。

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このセクターにおいては、広く多様な事業のほぼ全てが、2009年の厳しい不況に多かれ少なかれ苦しみました。例外はマクレーン(McLane)(ウォルマートを初めとする何千もの小売店への食料雑貨、菓子、非食料品の卸売業者)でした。

グレディー・ロジエ(Grady Rosier)はマクレーンに3億4400万ドルの税引き前利益を実現させましたが、それは312億ドルという膨大な売上高のうち、1ドルにつき1セントをわずかに越えるだけの金額でした。マクレーンは、3,242台のトレーラー、2,309台のトラクター、およびのべ1520万平方フィートになる55の配送センターを含む、膨大な自社所有の物的資産を用いています。しかし、マクレーンの最も重要な資産はグレディーです。

バークシャーには、売上高が縮小した時でさえ利益を伸ばしている、常に並外れた業績をあげているいくつかの会社があります。ここでは、それを実現しているCEO達をあげてみようと思います。

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不景気な工業セクターに主要な関わりを持っているビジネスの中では、マーモン(Marmon)とイスカル(Iscar)の両方が比較的力強い業績をあげています。 フランク・プタク(Frank Ptak)のマーモンはこれまでで最高となる13.5%の税引き前利益率を達成しました。売上高は27%下がりましたが、フランクのコストを意識した経営は収益の低下を軽減しました。

イスラエルに本社を置く、イスカルを止めることは誰にも出来ません。他の2つの世界的な小型切削工具メーカーは、両者とも非常に困難な年を過ごしました。イスカルの業績は2008年からかなり下がりましたが、タンガロイ(Tungaloy)(我々が昨年のアニュアルレポートで皆さんに話した大きな日本での買収)を統合し合理化する間さえ、同社は定期的に利益を知らせてきました。製造業が回復するとき、イスカルは新記録を作るでしょう。Eitan Wertheimer、Jacob Harpaz、そしてDanny Goldmanの素晴らしい経営チームは、その時がくるのを待っています。

(訳注:昨年の株主への手紙の中でバフェットは、イスカルによるタンガロイの買収について期待している旨、述べています)

2009年は、我々が所有する住宅や商業施設の工事に関連するあらゆるビジネスが、ひどく苦しみました。Shaw、Johns Manville、Acme Brick、そしてMiTekの税引き前利益を合わせた額は2億2700万ドルで、建設ラッシュだった2006年の12億9500万ドルからの82.5%低下しました。彼らの競争優位性はこれまで通りですが、これらの企業の業績は底を這い続けることになるでしょう。

昨年、バークシャーにとって大きな問題だったのは、ジェット機のフラクショナル・オーナーシップ(訳注:共有共用方式・分割所有形式)を提供する航空事業のネットジェッツ(NetJets)でした。長年、競合3社を合わせたよりも大きな価値を持つこの会社は業界首位の地位を固め、大きな成功を収めてきました。全体としてみれば、この業界での優位性に変化はありません。

しかし、ネットジェッツの事業運営に関しては、また別の話です。我々が会社を所有してきた11年間に、この会社は総額1億5700万ドルの税引き前の損失を記録しました。さらに、会社の負債が昨年の4月には、購入時の1億200万ドルから19億ドルまで増加しました。この負債に対するバークシャーの保証がなければ、この会社は倒産していたでしょう。ネットジェッツがこのような状態になり、私がみなさんの期待を裏切ったことは明らかです。しかし、幸運にも、私は救われました。

MidAmerican Energyの天才的な起業家であり経営者でもあるデイブ・ソコル(Dave Sokol)が、8月にネットジェッツのCEOになりました。彼のリーダーシップは変革を起こしました。負債は既に14億ドルまで削減され、2009年に7億1100万ドルという膨大な損失を被ったのち、現在、同社は堅固に利益を生み始めています。

最も重要な点は、デイブによってもたらされた変化が、Rich Santulli(NetJetsの前CEOでありフラ クショナル・オーナーシップ産業の父)が強く主張していた最高の安全性とサービスの基準を全く切り下げなかったと言うことです。我々の経営陣の多くと同様、デイブや私、そして私たちの家族が飛行機を使う際にはほとんどいつもネットジェッツを使うので、デイブと私はこれらの品質を維持することに非常に強い個人的関心を持っています。我々の誰も、特別な飛行機やクルーを割り当てられてはいません。我々は他のすべての共同所有者と同じサービスを受けています。つまり、我々は個人の契約を利用するとき、他の契約者と同じ価格を支払っているということです。要するに、自分が作った料理を自分で食べるように、ネットジェッツを自分自身で利用しています。航空事業においては、これ以上の証拠はないでしょう。

さて、いかがだったでしょうか。なかなか馴染みのない業界、企業が多かったかもしれません。この章の冒頭でバフェットが触れているように、この分野の企業は苦戦しているところが多いようです。しかし、それは不況のせいばかりではないかもしれません。ジェフ・マシューズが「バフェットの株主総会」でも触れているように、バークシャー・ファミリーの”7聖人”

ワールド・ブック・エンサイクロペディア、バッファロー・ニューズ、掃除機のカービー、作業服のフェックハイマー、ギンズナイフなども手がけている複合企業スコット・フェツァー、シーズキャンディーズ、そして、バフェットの自慢の種で、”北米最大の家具店”と謳うネブラスカ・ファーニチャー・マート(P.364)

は、もう何年もパッとしない状態が続いています。詳しくはこの本を読んみて欲しいのですが、バークシャーの傘下の企業すべてが優良企業というわけでもなさそうです。もしこれらの企業をバークシャーが所有していなかったら、今あえてこれらの企業の買収をするのかどうか、想像してみるもの面白いかもしれません。

ちなみに、この分野に属する企業のうちのいくつかは、その年間売上の大きな部分をほんの1週間ほどの間にあげています。どんな企業かは、マシューズの「バフェットの株主総会」を読んで欲しいのですが、色々な意味で興味深い事実ではあります。

一方、昨年の「手紙」でも触れられていたイスラエルの工作機器メーカーのイスカルは絶好調のようです。日本人として感慨深いのは、日本企業のタンガロイ(元・東芝タンガロイ)が間接的であるとはいえ、バークシャーに所有されているという事実でしょうか。日本にもバフェットのお眼鏡にかなう企業があるというのは、悪い気はしませんね。(イスカルを買収する側だったらもっとよかったのですが。笑)

また、ネットジェッツもこれから先、業績がどうなるのか注目したいところです。ビジネスモデル的には、非常に興味深い会社ですからね。

さて、次回は「Finance and Financial Products」についてのパートをお届けします。