望楼守の生思考

イノベーション。

マクロで見れば資本主義経済の成長ドライバーであり、ミクロで見れば企業が競争を制する、あるいは変革を遂げる切り札であり、ビジネスパーソンであれば誰しも成し遂げたいと切望するものでしょう。今日のような低成長の経済環境下においては、「イノベーション」という言葉が魅力的に響くようで、さまざまなメディアで見聞きするようになります。

しかし、実際にはイノベーション起こることは稀です。それは当たり前の話で、イノベーションとは、一見不可能に見えるものをブレイクスルーした結果、生まれるものだからです。そもそも不可能とも思える難問に挑戦する人がそもそも少ないし、その難問を乗り越えられる人はほんの一握りでしょう。

特に、現在のような経済が停滞している中では、人々(そしてその人間の集まりである企業)は、守りに入ってしまう傾向があるようで、チャレンジがよけいに少なくなる気がします。(経済が停滞しているからチャレンジが減るのか、チャレンジが減るから経済が停滞するのか、どちらなのかは分かりませんが・・・)

では、イノベーションを成し遂げるためには何が必要なんだろう。イノベーションに関しては、経営学の世界で数多くの研究がなされていますが、少なくとも、理想が必要なことは間違いないと思います。

 

皆さんは何か目標を立てるとき、どのように立てているでしょうか?

目標のたて方には2つのアプローチがあります。ひとつは積み上げ型。例えば、次のような考え方です。今日できることはコレコレだから、一ヶ月で出来ることは、これくらいだろう。ってことは、一年間に出来ることは、その12倍のこれくらいかな。

これは一見現実的な目標の立て方に見えますが、このような目標の立て方では、イノベーションはむずかしい。なぜなら、そこにはブレイクスルーの必要性がないからです。

では、もうひとつの目標の立て方、それはまずはじめに理想を考えることです。現実はひとまず横においておいて、理想の数字、理想の姿を想像します。もちろん、一見それは実現不可能なものでしょう。しかし、そこには実現するための阻害要因が存在するはずです。ここでなぜ実現不可能なのかを考え、その阻害要因をどうやったら取り除けるを考える。

その理想が高ければ高いほど、実現不可能であればあるほど、それをブレイクスルーしたとき、すばらしいイノベーションになるわけです、つまり、高い理想を求めるからこそイノベーションが生まれるのではないでしょうか。

 

 

しかし、理想を考える時に気をつけなくてはならないことがあります。それは、理想が夢想にならないようにすることです。では、(たとえ一見不可能に見えたとしても)ブレイクスルー可能な理想と、実現不可能な夢想を分かつものはなんでしょうか。

それは、しっかり頭を使っているか、目標達成のための方法を考え抜いているかということではないでしょうか?

例えばです。海王星に行く、という目標を立てたとします(10兆円の売り上げ達成でも、貧困の撲滅でもいいです)。この時、じゃあとりあえずとか言って、いきなりジャンプしてみたり、ロケットに乗って出発してみたりするようでは、その目標は夢想でしかありません。このようなアプローチでは、目標はおそらく達成不可能でしょう。

そうではなく、現実に今できること、やっていること、分かっていることをしっかりと踏まえて、その上で理想を現実化するためには何が阻害要因になっているか、どうすればその阻害要因を取り除けるのかを考える。このような、理想に対する(知的な)しつこさの有無が、理想と夢想を分かつのではないでしょうか?

もちろん、どんなに考え抜いても行動が伴わなければ、無意味・無価値ですから、走りながら考えることは非常に重要です。

どうありたいのか、どうしたいのかという理想・ビジョンをまず考える。そして、どうしたらそれが実現できるのか、それを考え抜き、実際にやってみて、さらに考えるを繰り返す。このようにして初めて、イノベーションは生まれるのではないでしょうか。アイディアはトイレで生まれるなんていいますが、なにもしない、ないも考えていないのにいきなりすごいアイディアが生まれるなんて、まずないですから!

 

以前、一橋大学の米倉誠一郎さんが言っていたことが強く印象に残っている。学校教育をどうするかについて、学ぶ量を増やすか減らすかを議論するんじゃなくて、今の100倍を半分の時間で身につけるためにどうするかを考える必要がある、とこんなようなことを言っていました。これが実現できたらイノベーションですよね!